【Quintet】
 泣くばかりで何も言わない沙羅を彼女の部屋に連れて行き、ベッドの中で抱き合ってキスをした。
そのまま、甘美な可惜夜《あたらよ》の夢に二人で溺れた。

(あそこで沙羅が失神しなかったら最後までしてたのか……)

 最後の一線を越える手前で絶頂に達した沙羅は意識を手離した。それから少し意識が戻っても、彼女はうつらうつらと夢と現実の境界線をうろついていた。

一線を越える前に沙羅が気絶してくれて正直ホッとした。海斗の欲の分身は既に限界を越えていて、彼女が気絶さえしなければ溜まった欲を沙羅の中で発散させていただろう。

 もぞもぞと身動いだ沙羅が目を開けた。寝ぼけ眼で海斗を見つめる沙羅は自分のベッドで海斗が寝ている状況を理解できないでいた。

「海斗……? あの……えっと……」
『とりあえず服着ろ。真っ裸だと風邪引くぞ』

ベッドの下には沙羅のパジャマと下着が散らばっている。海斗に乱雑に投げられたキャミソールとショーツを目にした彼女は顔を真っ赤にして頷いた。

『恋だの愛だの言ってたって結局は沙羅も女で俺も男だ。一晩一緒にいたらこうなるだろ』
「ずっと一緒に居てくれたの?」
『沙羅は俺の腕を枕にして呑気にイビキ掻いてたよ』

 ベッドを降りた海斗は床で無造作に丸まっているパジャマの上下も沙羅に向けて放り投げた。
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