【Quintet】
『ちなみに沙羅はまだ処女だぞ。最後まではしてない。イッて気絶したの覚えてねぇの?』
「あっ……、そうなんだ……」
『ここ、俺に舐められてそんなに気持ちよかった?』

 下着越しに海斗の手が沙羅のそこに触れた。欲情の余韻が残るそこに海斗が何をしたのか、もちろん覚えている。思い出すだけで顔から火が出る恥ずかしさだ。

沙羅にとって初めてのオーガズムの経験だった。

『まだ処女って知ってガッカリ? それともホッとした?』
「……ホッとした」

 海斗の体温を肌に感じていたあの時間は無我夢中で海斗に甘えていた。悠真への恋心を確信した矢先に理由もわからず拒絶されて、涙が止まらなかった。


 ──“俺を選ぶのは止めた方がいい”──
 ──“俺にしろよ……。沙羅”──


このまま海斗に身を委ねてもいいと、一夜でも都合のいい楽な考えに流されていた。

「ごめんね。期待させることして……。馬鹿だよね。最低だよ……」
『謝るなって。さっきも言ったけど沙羅は女で俺も男。こうなるのは必然だ。でも沙羅のファーストキスは貰っても処女まで貰うほど自己中じゃない。沙羅が俺がいいって思ってくれないと抱いても虚しい』

潤んだ目元の沙羅を抱き締め、彼はまた優しく囁いた。

『まだ寝てろ。朝飯は星夜に用意させる。学校は遅刻するなよ』
「うん……。ありがとう」

 夜が終わるまで片時も離さなかったぬくもりを手離して彼は沙羅の部屋を後にする。身体を襲うけだるさは不発な欲の残留感と睡眠不足。
< 306 / 433 >

この作品をシェア

pagetop