【Quintet】
 プリクラから目線を上げた沙羅の視界に入ったのは悠真のベッド。二人の気持ちを確認したあの夜は、沙羅だけが絶頂を味わって果てた。

(今日、するのかな。避妊の用意ってコンドームのことだよね?)

悠真がコンドームを入手していたとすれば、きっとこの後にその時がやってくる。嫌でもベッドが目に入ってしまって、そわそわと落ち着かない。

(ダメだぁ……。上手く出来るかわかんない。初めては痛いって言うし、どうしよう、どうしよう……)

 パンダのぬいぐるみと一緒にソファーに倒れ込む沙羅の側に悠真が立っていた。

『何してるの?』
「……わっ……! びっくりした……。いつの間に……」
『部屋入ってきても気付いてくれないから悲しかったんですけど。パンダ抱き締めて何考えてたの?』

起き上がった沙羅の横に腰を降ろした悠真は、熱いブラックコーヒーをすする。
沙羅も彼が淹れてくれたカフェオレに口をつけた。カフェオレはミルクたっぷりで優しい甘さだ。

「えっと……動物園楽しかったなぁって……」

 今後の展開を妄想してひとりで舞い上がっていたとは言えない。悠真はローテーブルに放置されたプリクラを手に取った。

『キスシーンよく撮れてるね』
「恥ずかしいよぅ」
『隼人は3年付き合っていてもまだ美月ちゃんとキスしたプリクラ撮ってるからな。それを嬉しそうに見せに来るんだよ……』

隼人が美月とのキスシーンのプリクラを見せびらかす場面は容易に想像がつく。彼女溺愛の隼人ならやりそうだ。
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