【Quintet】
人は自分の経験値でしか物事を理解できない。だからこそ美月が沙羅に言える言葉はひとつだ。
「私は沙羅ちゃんは凄いって思うよ。まずピアノが弾けるのが凄い。私はピアノ弾けないの。ピアノも他の楽器も全然ダメ。小学校の音楽の授業でリコーダーのテストがあったけど毎回ギリギリ合格。皆の前でリコーダー吹くの恥ずかしかったなぁ」
沙羅は目を丸くしている。小学生時代をアメリカで過ごした沙羅は日本の小学校の教育を知らない。
「楽器は練習すれば誰でも弾けるよ?」
「そうだね。練習すればある程度は弾ける。でも向き不向きはあるよね。私はどんなにピアノの練習しても“猫ふんじゃった”も弾けなかったよ」
“猫ふんじゃった”は沙羅が4歳の時点で弾きこなしていた曲だ。音楽の素養がなくても、曲名だけでメロディが浮かぶ一般的な楽曲のひとつ。
「だからピアノが弾ける沙羅ちゃんは凄い。自分ができないことができる人は皆凄いよ。沙羅ちゃんの周りは楽器が弾ける人だらけだから実感がないかもしれないけど、弾けない人間からすれば音大生なんて高嶺の存在だもん」
生まれた時から音楽の世界で生きてきた沙羅には当然の世界が美月には当然ではない。
それを言うなら音楽の世界しか知らない沙羅は、音楽以外の様々な勉強ができる大学で女子大生を謳歌する美月が眩しかった。
「美月ちゃんが楽器できないの意外だったよ。ピアノも似合いそうなのに」
「ふふっ。私はカラオケのタンバリン担当なの。なんでもできそうなイメージの隼人だって料理はできないしね」
「そう言えばそうだったね! 隼人くんが玉子焼き作ると焦げるんだよね?」
「そうそう。なんで玉子焼きが焦げるのか謎よ。顔も良くて頭も良くてスポーツも出来て、ビリヤードやチェスも強いくせに、料理だけは隼人の弱点なんだよねぇ」
美月にとっての音楽、隼人にとっての料理と同じで誰にでもウィークポイントはある。
「私は沙羅ちゃんは凄いって思うよ。まずピアノが弾けるのが凄い。私はピアノ弾けないの。ピアノも他の楽器も全然ダメ。小学校の音楽の授業でリコーダーのテストがあったけど毎回ギリギリ合格。皆の前でリコーダー吹くの恥ずかしかったなぁ」
沙羅は目を丸くしている。小学生時代をアメリカで過ごした沙羅は日本の小学校の教育を知らない。
「楽器は練習すれば誰でも弾けるよ?」
「そうだね。練習すればある程度は弾ける。でも向き不向きはあるよね。私はどんなにピアノの練習しても“猫ふんじゃった”も弾けなかったよ」
“猫ふんじゃった”は沙羅が4歳の時点で弾きこなしていた曲だ。音楽の素養がなくても、曲名だけでメロディが浮かぶ一般的な楽曲のひとつ。
「だからピアノが弾ける沙羅ちゃんは凄い。自分ができないことができる人は皆凄いよ。沙羅ちゃんの周りは楽器が弾ける人だらけだから実感がないかもしれないけど、弾けない人間からすれば音大生なんて高嶺の存在だもん」
生まれた時から音楽の世界で生きてきた沙羅には当然の世界が美月には当然ではない。
それを言うなら音楽の世界しか知らない沙羅は、音楽以外の様々な勉強ができる大学で女子大生を謳歌する美月が眩しかった。
「美月ちゃんが楽器できないの意外だったよ。ピアノも似合いそうなのに」
「ふふっ。私はカラオケのタンバリン担当なの。なんでもできそうなイメージの隼人だって料理はできないしね」
「そう言えばそうだったね! 隼人くんが玉子焼き作ると焦げるんだよね?」
「そうそう。なんで玉子焼きが焦げるのか謎よ。顔も良くて頭も良くてスポーツも出来て、ビリヤードやチェスも強いくせに、料理だけは隼人の弱点なんだよねぇ」
美月にとっての音楽、隼人にとっての料理と同じで誰にでもウィークポイントはある。