【Quintet】
 悠真との付き合いも10年近くに及ぶ。付き合いの長い悠真は多くを語らずとも、星夜の苦しみを理解していた。

『今日は先に帰れ。お前の分は日程調整してまたレコーディングするから、それまでに気持ち切り替えてこい。家帰って沙羅に会えば少しは元気出るんじゃないか?』
『ナニソレ。余裕だねぇ。俺が沙羅と二人きりになったら襲っちゃうかもよ?』
『沙羅に手出ししたら半殺しじゃすまねぇぞ?』

悠真は時折、爽やかな笑顔でとても残酷な言葉を吐く男だ。そんなに爽やかな笑顔で言われると逆に恐ろしい。

『うわー。リーダー怖っ……。まじに沙羅のことになると悠真はさぁ……』
『は、や、く、か、え、れ』
『はいはい』

 本当の兄弟のようなやりとりを交わし、迎えに来たUN-SWAYED専属マネージャーの不破智樹の車に乗り込んだ。

不破の愛称はふわっちと言うが、この愛称で呼ぶのは星夜と晴だけだ。

『ねー、ふわっち。もしも俺がUN-SWAYED抜けるって言ったらどうする?』
『えっ……ええええっ! 本気ですか?』

 不破のあまりの驚きように星夜は苦笑した。心なしか車体が揺れた気がする。
運転中の人を動揺させてはいけないものだ。

『……んー……冗談。もしも、って言っただろー?』
『驚かさないでください。SEIYAが抜けたらそれはもうUN-SWAYEDではなくなってしまいますよ。他の誰が抜けてもUN-SWAYEDは成り立ちません。UN-SWAYEDは四人じゃないとダメなんです』

 ──UN-SWAYEDは四人じゃないとダメ──

不破の言葉が突き刺さる。もしかしたら本当に、UN-SWAYEDが三人になるかもしれない……とは今はまだ黙っておこう。
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