【Quintet】
不破に渋谷のマンションまで送り届けられた星夜は十九階でエレベーターを降りた。十九階にひとつしかない自宅の扉を開くと室内にいい匂いが漂っている。
沙羅が夕食の支度をしているのだ。
『沙羅ただいまー!』
「お帰りなさい。早かったんだね」
沙羅は今日もただいまのハグに慣れずに顔を赤くする。沙羅の香りに、沙羅の温もりに彼は癒されていた。
ここが自分の居場所だ。
「あの……星夜?」
『ごめん。少しだけこのまま抱きしめさせて?』
普段よりも長いハグに沙羅が戸惑っているのはわかっている。けれど悠真や海斗もいない、せっかくの二人きりの時間だ。
あと少しだけ長く、沙羅に触れたい。
「レコーディングで何かあった?」
腕の中に収まる沙羅が顔を上げた。色白で小さな顔、黒目がちの瞳、ぷっくりとした血色のいい唇、手触りのいいセミロングの髪、抱き締めたらすっぽり腕の中に入ってしまう沙羅は子犬みたいだ。
『……なんでもない。料理の途中にごめんね』
危ない危ない。このままだと必死で抑えていた衝動が爆発しそうだ。沙羅は悠真と海斗の……大切な人なのに。
笑って誤魔化して沙羅を手離した星夜はキッチンを覗いた。
『今日の夕飯なにー?』
「ビーフシチューだよ。皆レコーディングで遅いと思ったから、すぐにあっためて食べられる物にしたの」
『おおっ! うまそう! 沙羅ありがとな。いつも俺達のこと考えてくれて……。美琴さんに挨拶してくる』
この家で唯一の和室には沙羅の母、葉山美琴の仏壇がある。
沙羅が夕食の支度をしているのだ。
『沙羅ただいまー!』
「お帰りなさい。早かったんだね」
沙羅は今日もただいまのハグに慣れずに顔を赤くする。沙羅の香りに、沙羅の温もりに彼は癒されていた。
ここが自分の居場所だ。
「あの……星夜?」
『ごめん。少しだけこのまま抱きしめさせて?』
普段よりも長いハグに沙羅が戸惑っているのはわかっている。けれど悠真や海斗もいない、せっかくの二人きりの時間だ。
あと少しだけ長く、沙羅に触れたい。
「レコーディングで何かあった?」
腕の中に収まる沙羅が顔を上げた。色白で小さな顔、黒目がちの瞳、ぷっくりとした血色のいい唇、手触りのいいセミロングの髪、抱き締めたらすっぽり腕の中に入ってしまう沙羅は子犬みたいだ。
『……なんでもない。料理の途中にごめんね』
危ない危ない。このままだと必死で抑えていた衝動が爆発しそうだ。沙羅は悠真と海斗の……大切な人なのに。
笑って誤魔化して沙羅を手離した星夜はキッチンを覗いた。
『今日の夕飯なにー?』
「ビーフシチューだよ。皆レコーディングで遅いと思ったから、すぐにあっためて食べられる物にしたの」
『おおっ! うまそう! 沙羅ありがとな。いつも俺達のこと考えてくれて……。美琴さんに挨拶してくる』
この家で唯一の和室には沙羅の母、葉山美琴の仏壇がある。