【Quintet】
 沙羅と星夜達は朝晩、美琴の仏壇に手を合わせて彼女と挨拶を交わすのが日課だった。

 悠真と海斗は生前の美琴を知っているが、星夜と晴は美琴とは面識がない。しかし絶対音感を持つ天才ヴァイオリニストの演奏はCDを通して聴いている。

沙羅のピアノ演奏を初めて聴いた時、優しくて穏やかな音色が美琴と重なった。沙羅の音色の中で美琴は生きている。
遺影の美琴の優しい笑顔も娘の沙羅と似ていた。

『美琴さん……俺はどうしたらいいですか?』

 これから進むべき道がわからない。どうすればいいのかわからない。

『なんて、すみません。こんなこと相談されても困りますよね』

 自分の道は自分で決める。……いや、最初から決定権などない。自分は決められたレールの上を歩くマリオネットなのだから。

考えるだけで憂鬱が増す。レコーディングもできないこんな時は他の仕事をするに限る。

『部屋で仕事してるから何かあったら呼んで』
「うん」

 キッチンにいる沙羅に一声かけて二階に上がった。階段を上がって手前から二番目の扉には紫の文字でSEIYAのプレートがかかっている。
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