【完結】冷酷なハズの騎士様が、何故か私を溺愛してきます…(´・∀・)?

25 美しき唇も

私はレイゼン様の嫉妬深さに少し寒気がしたが、今更にこの結婚を止めるという訳にもいかなかった。

「顔を上げて下さいませ。
私は怒ってなど居ません。」

「キャメラ…
すまなかった…

疲れておるだろう。
夕食は部屋で取り、ゆっくり休むといい。」

レイゼン様は儀礼的にそうおっしゃった。

レイゼン様がその気になれば、我が家などお取り潰しに簡単に出来るだろうし、私は…?

最悪、怒り狂ったレイゼン様に殺されてしまうかもしれないからだ…

そう思うとゾッとした…
いくら巨万の富があると言えど…
安易に婚約したのかもしれない…

♦︎

私はその夜中々眠りに就けなかった。

少しお腹も空いた気がするし…

私は魔法の灯籠を手に真っ暗な廊下を歩いた。

突如、風が吹き、私は灯籠を落としてしまった。
魔法灯籠は灯火を消し、廊下は真っ暗になった。

「…ネア…
俺を…
1人にした君が憎い…」

私のすぐ正面からそんな声が聞こえた。

「ヒッ…!」

短く悲鳴をあげた時、甘い香りと共に私の唇に柔らかいものが触れた…
レ…イゼン…さ…ま…?

「こんな時間に廊下を歩いていると、襲われてしまうぞ。
この俺にな。」

レイゼン様は炎魔法であかりを付けると、冗談ぽくそう言った。

「あの…今、私に…
き、き、キス…?」

「こんな真っ暗な中ではその美しい唇も見つかるまい。
キスなど無理であろう?」

レイゼン様は不思議そうにそう言った。

確かに…
この真っ暗な中では、レイゼン様が私に口づけだけをするのは不可能である。

「おやすみ、キャメラ…
我が愛しき姫…」

レイゼン様は私を部屋に送り戻すと、そう言って去っていった。
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