鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~
「まぁそうだね。だから僕も当然、聞いたよ」
「それで答えは?」
「僕を受け入れる準備ができていない、と断られたよ。あと僕の準備もできていない、ともね」
「それは平民になったクライド殿下を受け入れる、と解釈してもよろしいのですか?」

 受け取り方によっては、遠回しな断り方にも見える。

「どうだろうね。それは僕の今後の頑張りにかかっていると思っているよ」
「まぁ」

 思った以上に現実的な方のようだった。クライド殿下だけでなく、お相手の方も。
 王子に生まれ、王太子になることが当たり前のように過ごされてきたクライド殿下。
 頭がお花畑ではないだけ、我が国、セルモアの王室は明るいと思えた。それだけに、王太子になりたくない、とは……少しだけ残念である。

「だからね、ヘイゼル嬢。君の協力が必要だということは、理解してくれたかな」

 見直した途端、まるで獲物を見つけたような表情を向けられて、私はその後に続く言葉を聞くのが怖くなった。
 しかし、ここまで聞いてしまった以上、拒否をすることも、逃げ出すこともできない。そう、最初から選択する余地などなかったのである。
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