鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~
「ほんの少しでも、ヴェルター卿に覚えていただけて嬉しいです。母とメイド以外に助けてもらったのは、あの時が初めてだったので」
「っ!」
「だからヴェルター卿を好きになった、というのは単純かもしれませんが、それくらい嬉しかったし、とても素敵に見えました」

 魔獣に襲われた時、これでようやく母の元へ逝ける、と思ったけれど、デニス様に助けられた時の安堵感は半端なかった。

「私もまだ生きていていいのだ、と思えて」
「ヘイゼル嬢……」
「あっ、すみません。何だかしんみりしてしまいましたね。ヴェルター卿とは、楽しいお話をしたかったのに」

 けれど目に溜まった涙は引くどころか、頬を伝って流れた。
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