鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~
 ***


 けれどその後は、穏やかな日々が続いた。
 さすがの兄も義母も、デニス様が傍にいる状態で、私を罵倒したり、虐げたりするような姿は見せたくなかったのだろう。
 特に兄は、クライド殿下の婚約者に私がなったことで、目的の一つは達成したといってもいい。

 そう、ファンドーリナ公爵家から王妃を輩出できる立場を得たのだ。
 長いファンドーリナ公爵家の歴史には、数名の女性が王妃となったが、近年は久しい。だから兄にとっては、この上ない名誉を得ることができる、というわけである。

 けれどいつまでもそんな日々は続かなかった。ストレスとは日々、堪っていくものだったからだ。

「全く、聴くに堪えないわ! 我がファンドーリナ公爵家は音楽に造形が深いと言われているというのに、ヘイゼルは……」

 夕食前、義母に呼び出されたと思ったら突然、竪琴を弾くように強制されたのだ。
 まぁ、結果は良くても悪くても、言うことは毎度、同じ。「聴くに堪えない」のなら、聴かなければいいのに、と思ってしまう。
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