鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~
「では何故、弾くようにおっしゃったのですか?」

 デ、デニス様!? 私でも、そんな揚げ足を取らないのに!

「伯爵家の分際で、私の言うことに口を出すつもり?」

 言わんこっちゃない。父である前ファンドーリナ公爵が亡くなってから、さらに好き勝手し始めた義母。元公爵夫人ということもあり、自分よりも下の者に意見されるのは我慢できない人なのだ。

「失礼ですが、私はクライド殿下の命で護衛に来た身」
「だからといって、王子殿下と同じ権限を持っているわけではなくってよ。まさかとは思うけど、そんな勘違いをしているのではないでしょうね」

 扇をバサッと広げ、口元を隠す。けれどそのような威嚇、騎士であるデニス様には通用しない。いや、そもそも相手にすらなっていたかどうかも怪しかった。
 その証拠にデニス様は、表情一つ変えずに懐からある物を出した。その時点で勝負はついていた、といってもいい。
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