鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~
 兄を前にして強気に出るデニス様。いくら隣にクライド殿下がいるからといっても、無謀なのではないか、と思ってしまう。
 しかしアイコンタクトを取る二人を見て、それは杞憂に終わった。

 私が後ろにいるため動けないデニス様に代わり、クライド殿下が扉の方へと歩いて行く。そして開けた先にいたのは……。

「お前たち! まさか売ったというのか、使用人の分際で」
「公爵。ここに僕がいることを忘れたのかい? 言葉には気をつけてくれ。公爵邸に着いてから、いや着く前から怒りを抑えているほどだからね」
「しかしこれは我が公爵家の問題です。使用人が情報を売るなど……」
「ファンドーリナ公爵!」

 扉の向こう側にいるメイドの二人がスカートを握り締めた瞬間、クライド殿下が叱責するように兄を呼んだ。
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