鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~
「公爵邸にいた時は、兄や義母に悟られるわけにもいきませんでしたし、クライド殿下との約束もありましたから。想いを伝えることも、アピールすることだって無理だと思っていました」
「だから機会を作らせてもらいました」
「え? それでは、この間の件はわざと?」
「はい。ヘイゼル嬢の境遇をどうにかして差し上げたかったので、クライド殿下にご相談した結果、あのような処置を取らせてもらいました。そもそも不思議だとは思いませんでしたか?」
「それは……」

 確かに思った。ファンドーリナ公爵邸にいれば、嫌でも誰が権力を持っていて、誰が仕切っているのか、手に取るように分かるはずだからだ。
 ましてやデニス様は王室の直轄である近衛騎士団に所属している身。上下関係が厳しいと言われているところだから、そういう点は聡いと思っていた。

 それなのに、義母に喧嘩を売ったのだ。不思議に思わない方がどうかしている。

 私は素直に頷いた。
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