鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~
「私は音楽家ではないので、高尚な感想など求めてはいません。デニス様が良かった、と思ってくださるだけで十分ですし、また聞きたいと言われただけで舞い上がってしまいます。私もまた、単純なので」
「可愛いな」
「えっ?」

 顔を上げようとした瞬間、デニス様に頭を撫でられ、再び同じ体勢になる。それが心地よくて、私もデニス様の背中に腕を回した。

「だからこれからも守らせてくれないか?」
「勿論です!」
「……一週間後、クライド殿下が正式に王太子となられる。廃位されるために、あらゆる策を講じているから、当然ヘイゼル嬢も無事では済まないだろう」
「覚悟はできています」

 そうでなければ契約婚約などしない。

「不足の事態が起きても、ヘイゼル嬢だけはなんとしてでも守る」
「私も良い結果となるように頑張りますわ」

 だってこれからのことなんて、誰にも分からないのだ。いや、たった一人を除いては、と言った方が正しいのかもしれない。

 そう、クライド殿下を除いて……。
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