鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~
「我が儘? ケイティ夫人が、ですか? そんな方には見えませんでしたが」
「あぁ、ヘイゼル嬢には話していなかったか。ケイティはあれでも、我が儘でね。だから長いこと、嫁ぎ先が決まらなくて困っていたのだが……どうやら本人は嫁ぎたくないらしくて、意図して我が儘を見せていたらしい」
「……つまり、離婚したくてお兄様を困らせている、というわけですか?」
「それだけではない。愛想を尽かした公爵が愛人を作るのを待っているのだとか」
「確かにその方が、ケイティ夫人にとっても利益がある離婚になると思いますが……」

 離婚したいために、何もそこまでしなくてもいいのに。それに長引けば長引くほど、離婚なんてできるのかも怪しかった。
 なにせ権力欲がある兄は、世間体も気にする。王女様を娶った時点で、他の貴族よりも王族に近いと思っているに違いない。
 だからそう簡単にケイティ夫人を手放すとは思えないのだ。よって、お飾りの公爵夫人vs愛人という未来が、容易に浮かんだ。

 これにケイティ夫人が勝てればいいが、愛人が勝ったらさらに悲惨なことなる。しかしクライド殿下はクククッと笑ってみせるだけだった。
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