鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~

第1話 利害関係

 時を遡ること、一年前。
 クライド殿下の二十歳の誕生日パーティーに招かれた時のことである。私もちょうど十八歳となり、社交界デビューの年だった。

 その頃はまだ、お互い婚約者ではなく、私は候補の一人にすぎなかった。だから、というわけではないけれど、それなりに私も恋する乙女だったのだ。

 そう、私には好きな方がいた。名をデニス・ヴェルター伯爵令息。それも嫡男ではなく、三男だった。
 仮に私がファンドーリナ公爵家の一人娘だったら、婿養子に迎い入れることができたことだろう。

 けれど残念なことに、私には年の離れた兄がいた。すでにファンドーリナ公爵の地位に就いていたため、どうあがいても無理な話であり、さらに私のファンドーリナ公爵家での立ち位置が弱いことも重なって、それは夢のまた夢だった。

「はぁ~」

 思わずため息が出た。目の前のテーブルに置かれているカップに映る、何もできない自分に嫌気がさして。すると……。

 チリン。

 どこからか、綺麗な音色が聞こえて顔を上げる。その途端、呼び鈴を持ったクライド殿下と目が合った。
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