鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~
 愛する人が近くにいるだから、何も怖くはないわよね。だって、私もそうだから分かる。後ろでデニス様が見守ってくださっている、というだけで、逃げずにいられるのだから。

 私はクライド殿下を見据えて、この場を設けた目的の言葉を待った。

「そしてミランダは、僕の想い人でもある。だからヘイゼル・ファンドーリナ公爵。僕と婚約破棄してほしい」
「……ミランダ嬢もそれをご承知なのですね」

 私がミランダ嬢に視線を動かすと、周囲から「なんてことなの!」「きっとあの平民が王太子殿下を誑かしたのよ」「ファンドーリナ公爵様の晴れの舞台に、こんなことをするなんて、なんて浅ましいのかしら」
 そんなミランダ嬢を侮辱する言葉が飛び交った。

 しかし私は淡々と用意していた言葉を口にする。
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