鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~
「今の私はファンドーリナ公爵となった身。クライド殿下と婚約破棄をすることに異存はありません。そもそもこの地位はクライド殿下のお陰で得られたものですから、それで恩返しができるのなら本望です」
「ありがとう、ファンドーリナ公爵」
「しかし、それは私の意思であって、国王陛下の承諾ではありません。説得できるのですか?」
「なに、王子は僕だけではない。優秀な弟たちがいるのだ。父上も分かってくださるだろう」
「それでは、民衆はどうでしょうか? ここにいる者たちを説得できますか?」

 ここにいるのは、私の侯爵拝命の祝いで来た貴族たちだ。いわば私の味方だと言ってもいい。だから尋ねた。

「そうだね。ここまでのやり取りを聞いていれば、僕たちの婚約破棄イコール王太子の廃位。並びに平民に下る、ということが分からない者たちではないはずだ」
「クライド殿下! それはいけませんわ! 平民になどと……」

 会場にいた令嬢が悲痛の叫びを上げたが、クライド殿下は意にも留めなかった。
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