鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~
「しかし僕はミランダ以外を愛することはできないし、妻にもしたいとは思わない。だから今宵、ファンドーリナ公爵に婚約破棄を願い出たのだ。よって、この場で止めたからといっても僕は、どんな釣書も受け取る気はない」
「つまり、ミランダ嬢との婚姻を承諾してもらえなかった場合は、一生独身を貫き通すとおっしゃるのですね」
「あぁそうだ、ファンドーリナ公爵」
「それほどまでにミランダ嬢を。であるならば、ミランダ嬢の気持ちもお聞かせ願えませんか? この場にいる者たちの前だけでもいいので、クライド殿下に対するお気持ちを。王太子でも王子でもない、クライド殿下本人を愛しているとおっしゃっていただきたいのです」

 そうすれば少なくとも、ミランダ嬢への醜聞が軽減されるかもしれない。王太子を(たぶら)かした平民だと、先ほども言われていたからだ。

「勿論です。私、ミランダ・ロブレードはクライド殿下を、いえクライドを愛しています。けして、王太子という地位に惹かれたわけではありません!」
「では、私だけではなく、この場にいる者たちが証人です。よろしいですね」

 先ほど、誰が言ったのか分からないが、私は周囲を睨むように眺めた。しかし今はそれに異を唱える者はいない。
 何故なら、ファンドーリナ公爵となった私の怒りを買いたくない者たちがここにいるからだ。
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