鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~
「しかし、それではあまりにもファンドーリナ公爵様がお可哀想です」

 そんな者たちの集まりだったからこそ、私に同情の目が向けられるのも分かる。けれど私とデニス様にとっては好都合だった。
 後ろにいたデニス様が、私の前に来てクライド殿下に一礼する。

「この場の無礼をお許しください」
「構わないよ、ヴェルダー卿。いや、むしろ遠慮をしないくれ」
「ありがとうございます」

 そして振り返り、私と一瞬だけ見つめ合った後、その場で跪いた。

「ヘイゼル・ファンドーリナ公爵様。私はクライド殿下の命で貴女様の護衛騎士となり、傍でお仕えしてきました。しかし婚約破棄された以上、私はもうお傍にいることができません」
「……っ!」

 分かり切ったことでも、デニス様の口から聞かされるのは堪える。けれど次の瞬間、デニス様に手を取られた。
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