鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~
「まぁ、そうだね。でも、僕の弟妹たちの中にも、ヘイゼル嬢と同じ立場の子はいるよ。ヘイゼル嬢のように公の場には出て来られないけれど」
「……私の場合はクライド殿下のお陰です」

 こういえば、皆まで言わなくても理解できるだろう。向こうから話題を振ってきたのだから、気を悪くされるとも思えない。
 するとクライド殿下は、ニンマリと笑って見せた。

「それならさ、取引をしない?」
「私には取引できるものがありません」
「あるよ。僕の婚約者、という地位が」
「意味が分かりません」

 何をおっしゃっているのだろう。私が婚約者になったところで、クライド殿下には、何のメリットがない。あるのはファンドーリナ公爵家という後ろ盾。
 けれど王妃様の子で、第一王子であるクライド殿下にとっては、そこまで必要なものではないだろう。

 しかしそんな私の態度などお構いなしに、クライド殿下は口角を上げた。
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