鐘が鳴った瞬間、虐げられ令嬢は全てを手に入れる~契約婚約から始まる幸せの物語~
「う~ん。そんなに警戒しないでほしいな。これはヘイゼル嬢にとって、悪い話ではないのだから。むしろいい話だと思うよ。そう、好きな相手がいるヘイゼル嬢にとってはね。確か、ヴェルター伯爵家の三男で、デニスといったかな」

 クライド殿下は視線を遠くへ向ける。私は動揺しつつ、同じように視線を動かすと、そこには黒髪に青い目をしたデニス様がいた。

「でも、ファンドーリナ公爵は許してくれないだろうね、きっと」
「それはクライド殿下も、ではありませんか。王太子になるためには、我がファンドーリナ公爵家の後ろ盾が必要だと思いますが」
「うん。母上からも、話をまとめるように言われて困っている」
「は?」

 思わず相手が王子であることも忘れて言ってしまった。
 だって今、ご自分に必要なことを認めた上で困る、だなんて……意外と頭が……ゴホン。失礼。
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