恋愛なんてしない

どのくらいそうしていたのだろうか。

そんなに長い時間ではなかったと思う。


「如月?」

姿を見なくても誰だかわかる。

安心出来る声が後ろから聞こえてきた。


「どうした?トイレ空いてるけど。入んねえの?」

涙を流しているところを見られたくなくて壁向きに話す。

「あ、先どうぞ。」

声が上ずってしまう。

どうか、泣いているのがバレませんように。

そう思っていたのに。

手を引かれて声の主。先輩の方を向かされそうになったため先輩の方を向かないように体に力を入れる。

「どうした?」

心配そうな先輩の声が聞こえる。


「大丈夫です。気にしないでください。」

できるだけ冷静に。
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