恋愛なんてしない

私の今の状況がバレないように声を出す。


「いや、大丈夫じゃないでしょ。」

そう言って先輩が強く手を引くものだから、身体のバランスを崩してしまう。

「ごめん、手。強く引きすぎた。」

俯いたまま、何も話さない私に優しく声を掛ける先輩。


「何があった?」

先輩の顔を見ずにそのまま首を横に振る。

その間も、涙が止まらない。

すると、先輩の匂いが近くなり、次には温もりを感じた。


抱きしめられていることに気付くのに時間はかからなかった。

「やめてください、服汚れちゃいます。」

「シー、そんなん気にしなくていいから。一回黙って。」


それでも先輩から離れようと先輩の身体を押すが、びくともしない。

その反対に、ギュッと力を入れて抱きしめられる身体。


何が起きているのかと思っていると...。

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