恋愛なんてしない

「もー、愛ちゃん飲みすぎだよ。」

「ごめんね、光希くん。」

「ほら、トイレ。もうすぐだよ」


そんな声が聞こえてくる。

私が見られないようにする為にこうしてくれてたんだと気づいた。

しかもトイレに来たのは先ほど同じテーブルにいた光希とその彼女だった。

2人がトイレに入ったことを確認し、先輩は私から離れる。


先輩に抱きしめられている間に、いつの間にか止まっていた涙がまたジワリと滲む。

それに気づいた先輩がまたギュッと抱きしめてくれた。


2人が気づいているのかいないのか、トイレから出てきて席に戻るような声が聞こえた。

「大丈夫?」

涙が落ち着くと、身体を話して優しい顔をした先輩が私の顔を覗き込む。

私はゆっくりと頷いて

「すみません、隠してもらってありがとうございます。服も...。」

先輩の服が私の涙で濡れてしまった。

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