恋愛なんてしない

「こんなのジャケット脱げばいいだけだし気にすんな。」

優しい顔をしながら頭をポンポンと撫でられる。


「今日はもう帰ったら?家まで送る?」

先輩はそう聞いてくれたけど、荷物もすべて席に置いたまま。

ということは、荷物を取りに行かなければならない。


この顔を光希や彼女には見られたくない。

「荷物なら俺取ってくるけど...。」

私の心の中を察してかそう言ってくれる先輩。

「ここで帰ったって思われるのが嫌です...。」

何故かよく分からないプライドが邪魔をする。


先輩は私の頭を撫でながら

「じゃあ俺の席来る?むさくるしい男ばっかだけど。」

笑いながらそう言ってくれた。


そっちの席にいた方が気がまぎれるかなと思い、静かに首を縦に振る。

「そうだ。仲いい友達も呼んだら?一人気まずいでしょ?」

< 52 / 70 >

この作品をシェア

pagetop