一ノ瀬さん家の家庭事情。®️

髪を手で払ってみる。

「ううん、じっとして。」

そして近づく浅丘君の顔。

「はい、とれた。」

近い！近い…

ドキドキして、死にそう…

「一ノ瀬…」

えっ、？

ええっ！？

こ、これは…

まさかの！？

だってもう、つきあって半年。

こういうことしても、おかしくない？

普通、だよね！？

「…っ…」

あたしはぎゅっと目を瞑った。

…あれ？

なにも、ない。

恐る恐る目を開けると目の前にはハッとしたようにあたしから離れる浅丘君。

「ごめん、…俺また約束、守れそうになかった…」

約束、ってあのりっちゃんが考えたおつき合いなんとか、ってやつ？

そのせいで、またこういう風になっちゃったの？

なんでいつもいつも、そんなもののせいで邪魔されちゃうの？

…浅丘君は、あたしと…

あたしと、キス、したくないの？

「…一ノ瀬？」


「…浅丘君の、意気地なし…！」

あたしは顔も見れなくて、思いっきり猛スピードで家まで駆け出した。