一ノ瀬さん家の家庭事情。®️
ちょっとくらい、顔を出したほうがいいかな?

文化祭終わったらすぐに秋の新人戦もある。

「あれ?愛ちゃん帰らないの?」

「ちょっと体育館によるね!」

急がないと、体育館しまっちゃう!

走って行ったのに、もう体育館の中は真っ暗。

電気消えてるってことは、部活終わっちゃった。

はあ…

遅かったか…

帰ろうとして、あたしは足を止めた。

その原因は聞き覚えのある声。

「…だから、あたしは、聡太が好きなの!ずっとずっと、小さい頃から!」

この声は、愛奈ちゃん。

そしてこれは、きっと告白。

「もう何度も言ってるのに、どうして聡太はいつまでもあたしのこと、妹にしか見てくれないの?」

もう何度も?

そっか、夏休み、浅丘君の携帯に愛奈ちゃん出てたもんね。

あたしの足は勝手にその場から逃げ出していた。

このあとの、浅丘君の声を、返事を聞くのがすごく怖くて。

あたしたち、付き合っているはずなのに。
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