一ノ瀬さん家の家庭事情。®️
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「ごめんなさい、あたし、柚之木君とは付き合えません。なぜなら浅丘君が好きだから!」

あたしがそう言うと、柚之木君は笑った。

「うわー、清々しいほどはっきりと振られちゃったよ、俺。」

振るのは勇気がいる。

だけどその勇気を出さなくちゃ、中途半端は一番みんなを傷つけて、迷惑をかけるから。

それはよくわかってる。

だから、あたしはきちんと言うの。

「…愛ちゃんの王子様になりたかったんだけどなー。」

柚之木君はヘラッといつもの笑顔。

「浅丘君が好き?」

あたしは深く、大きく頷いた。

その思いに迷いも間違いもない。

「…かなわないなー、俺、頑張ったのに。」

頭の後ろで手を組む柚之木君はやっぱり本気かどうか、わからない表情。

「でも、ごめんなさい。キス、無理やりしちゃった。」

頭をさげる柚之木君は素直だ。

「浅丘君にも謝っとくね!」

二年生の文化祭が終わった。
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