一ノ瀬さん家の家庭事情。®️
「俺はさっきの先生が好きなんです。」

涼太君は恥ずかしがる様子もなく、はっきりとあたしを見て言った。

「あの人は俺のこと、ただの生徒にしか見てくれてない。でも俺は諦めません。」

すごい。

こんなふうに堂々とできる涼太君。

だって副会長さんは優兄と同い年だから、涼太君よりも三つ年上で。

それに中学生と高校生って壁だけじゃなく、家庭教師とその生徒っていう関係。

なのに、その困難を感じさせないような堂々と自信に満ちてる涼太君。

「まあ、頑張って。兄ちゃん鈍感だから、嫌なことは嫌だって言わないと多分なかなか気が付きませんよ。」

涼太君はそう言うとまた二階に上がっていってしまった。

嫌なことは、嫌か…

でもこれはあたしの独りよがりな嫉妬心。

それにいくら彼女だからといって愛奈ちゃんと浅丘君の仲を引き裂いたりなんてできない。

はあ…

本当に情けないや。

ため息をひとつつくと、リビングに戻る。
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