一ノ瀬さん家の家庭事情。®️

さっきと変わらず浅丘君の隣には愛奈ちゃん。

「なあなあ、一ノ瀬。ここできた？」

ボーッと二人を見ていると久住君が教科書を見せてきた。

「えーっと、ここは確か…」

去年まではエセヤンキーみたいだった久住君。

随分と真面目になったものだ。

去年はあたしとどっこいどっこいだった成績もぐんぐん伸びて今じゃ学年でも上位に食い込むくらいだ。

「その公式？こっちじゃねえの？」

「それ使うの？うーん…」

文系のあたしたちにとって数学の応用問題は最大の敵。

…難しい。

ほのちゃんは何やら一生懸命英語を暗記しているらしくブツブツ言ってるから質問しにくい。

葉ちゃんは…うん、寝てるね…

「なあ、聡太！ここ教えてくれよ。」

久住君が浅丘君を呼んだ。

「おー、どこ？」

浅丘君がこちらにやってくる！

こんなチャンス！

「一ノ瀬に教えてやってよ。で、一ノ瀬、後で俺にも教えて。」