【この本を読まないでください】
 俺の模試の結果を見て、彼女が

「一緒の大学に行きたいなぁ」

 と、ぽつりと言った。彼女は志望校が違うらしく、卒業すれば必ず離れ離れになってしまう。それが寂しくて、俺は彼女が志望校だという大学も視野に入れることにした。浅はかな理由だと言われるかもしれないが、オープンキャンパスにも行き、ちゃんと魅力を感じた大学だ。

 それからは二人で切磋琢磨して過ごした。夜中まで通話をしながら勉強したり、一緒に図書館に行ったり。辛かったが、それすらもいい思い出だと思ってた。

 しかし受験日当日、彼女は試験会場に来なかった。体調でも悪いのだろうか。心配になって休憩時間に電話を掛ける。しかし、彼女は誰かと通話しているようで、電話に出ない。あれだけ勉強したじゃないか。一体何があったというのだ。考えうる限りの可能性が頭の中に巡り、ふと思い出す。そういえば俺は彼女が志望大学の赤本を解いているところを見たことがない。
< 53 / 54 >

この作品をシェア

pagetop