【この本を読まないでください】
学校帰り、信号のない交差点の手前で男に声を掛けられた。男は血の気のない真っ青な顔で私に尋ねる。
「今、何時ですか」
「今は16時45分です」
「ありがとうございます……」
時間を教えても、男は虚ろな瞳でそこに立っていた。
次の日も、男はそこにいた。
「今、何時ですか」
「え……」
昨日と同じ質問を繰り返す男に、寒気がした。
「すみません、急いでいるので」
不審者かもしれない、と、私は足早に過ぎ去ろうとする。しかし男はさらに質問を重ねた。
「交番への行き方は知っていますか」
「ごめんなさい。分かりません」
本当は知っていたが、答えなかった。男はそれ以上聞いては来なかった。
次の日も、次の日も男は私の前に現れた。私を狙っているのかと怖くなり、5回目は足を止めず無視をした。次の瞬間、トラックが私に突っ込み、私は意識を失った。私が最後に見たのは、こちらをじっと見つめる男の姿だった。
「今、何時ですか」
「今は16時45分です」
「ありがとうございます……」
時間を教えても、男は虚ろな瞳でそこに立っていた。
次の日も、男はそこにいた。
「今、何時ですか」
「え……」
昨日と同じ質問を繰り返す男に、寒気がした。
「すみません、急いでいるので」
不審者かもしれない、と、私は足早に過ぎ去ろうとする。しかし男はさらに質問を重ねた。
「交番への行き方は知っていますか」
「ごめんなさい。分かりません」
本当は知っていたが、答えなかった。男はそれ以上聞いては来なかった。
次の日も、次の日も男は私の前に現れた。私を狙っているのかと怖くなり、5回目は足を止めず無視をした。次の瞬間、トラックが私に突っ込み、私は意識を失った。私が最後に見たのは、こちらをじっと見つめる男の姿だった。