【ダーリン(仮)闇堕ち防止計画】〜一途な悪女のヤンデレ製造物語〜
2.悪の大魔女へのターニングポイント1
私が悪女を目指すようになったターニングポイントは、二つある。
まず一つ目のターニングポイントはダーリン(仮)と出会うより、ずっと前のある夜。私は未来を夢に見た。
当初の夢では、縁もゆかりも無い美少年が現れて突然、現在のように成人したダーリン(仮)と全く同じ姿へと成長する。
そしてダーリン(仮)は現在の時間軸となる今日、この場所で瀕死の重症を負った。
更に、そこにいるダーリン(仮)のパーティーである三人と全く同じ姿をした人達三は、無惨な遺体と成り果てたの。
見るからに損傷の激しい、痛ましい三つの遺体。
何故なら夢の中の彼ら三人は、死の直前、そして死後も故意に肉体を痛めつけられたから。
三人を殺したのは、数十人の刺客達。刺客達は自分達の殺害の痕跡を消し、魔竜に殺されたように見せかける為、三人を甚振ったわ。
生き残ったダーリン(仮)だって、とっても深い傷を体だけじゃなく、そう、クールでビューティーなご尊顔にも負わされたんだから!
最低な刺客達の蛮行によって仲間を殺され、死に瀕したダーリン(仮)へ、不意にある者が囁くの。
――卑怯者達に陥れられ、仲間を失い悔しくないのか。復讐の為に我を受け入れろ。我と共に人・類・を滅ぼせ。
そう囁いたのは刺客達に襲われる直前、必死にパーティー一丸となって討伐したはずの魔竜だった。
絶望と憎しみに駆られたダーリン(仮)は……頷いてしまう。
そうして魔竜の言う通りにダーリン(仮)は不味そうな魔竜の血肉を食み、一時的に仮死状態になったわ。
私ならもっと良いお肉食べさせたのに! 案外、食あたりで仮死状態になったんじゃない?!
まあそれを見た刺客達は依頼主に、ダーリン(仮)のパーティー全滅を報告したでしょうね。
野晒し状態だったダーリン(仮)の体は、いつの間にか大地の亀裂に転移して黒い繭に包まれた。この中で魔竜と一体化していく。
三年後。彼は魔竜王として孵化したわ。姿形はそのままに、漆黒の髪と瞳となって。
孵化した瞬間の彼のすっぽんぽんたるや! まさに至高の芸術作品! 思い出すとまた鼻血が……。へへへへへへへへ……コホン。
魔竜王となったダーリン(仮)は、自身の生家である公爵家を、そしていつの間にか世代交代していた、新王が収める祖国を滅ぼした。
で、今度は世界を滅ぼさんとするのだけれど……はい、そこで疑問に思っていただけたかしら?
この場合、滅ぼすのは刺客達とその依頼主だけじゃなかったのかって。
いくら魔竜と一体化したからって、何故じ・ん・る・い、だなんて大仰な範囲に? 不思議に思わない?
だって仲間を殺されたからって、復讐相手に人類を選ぶ?
幼い私は、夢の中で首を捻った。
すると美少年時代のダーリン(仮)が、どんな生活を送りながら成長していったのかも、夢は再現してくれた。
結論から言えば魔竜討伐の日。満身創痍ながらも何とか魔竜を討伐し終えたダーリン(仮)が率いるパーティーが、気を緩ませた直後に襲撃するよう刺客達に命じたのが、ダーリン(仮)の名ばかりの家族。そしてまだ王太子だった新王よ。
実はダーリン(仮)、とある公爵が妾に産ませた子供だったの。
ダーリン(仮)の母親は平民だったけれど、公爵家当主だった父親は母親に癒されて相思相愛だったんですって。
しかもその母親は彼が六歳で急死。父親は当然のように愛する女性との子供を引き取ってし・ま・っ・た・。
これには私、同情しちゃう。
もちろんダーリン(仮)にもだけれど、何より継母となってしまった公爵夫人と、二人いた異母兄達によ。
父親は一国の公爵家当主だし、親として引き取るのは、まあわからなくはない。
けれど普通に考えてみて? ダーリン(仮)は不義の子供よ?
ただでさえ公爵夫妻の夫婦仲は冷えきっていた。そのせいか頼りのはずの父親は、何かと邸を留守がち。
ダーリン(仮)の実母が生きている時は、そっちに寝泊まりして帰らなかったみたい。けれどダーリン(仮)を引き取ってからは、わざと仕事に精を出し、結局邸に帰らないわけ。
そんなクソ旦那が他所でこさえた子供と、プライドの高い夫人や兄達の邸で過ごす時間が多くなればどうなるか。
はい、児童虐待の開始。
別に夫人や異母兄達が悪いかって言えば、私はそうは思わない。
冷たい? まあ否定はしない。だって今の私は悪の大魔女だもの。
でもね。自分達の家庭ぶっ壊した女の息子が、貴族の中でもトップクラスの公爵家に籍を入れる。面白いなんて酔狂な心情になれるかしら? って、聞くまでもないわね。
そりゃ積年の恨みとばかりに飯抜き、殴る蹴るの暴力だってふるっちゃうわ。常識としてはどうかと思うけど、人としてはまともな反応じゃない?
もちろん虐待はね、ダメ、絶対。ダーリン(仮)は……悪くは・ないわ。
そして夫人達が不義の子供を愛する気になれないのもまた、責められないでしょ?
夫人からすれば夫の行動は、女としてもハイクラス夫人としても、プライドや面子をズタズタに傷つけるものだもの。
もちろんダーリン(仮)は頑張って貴族らしい品を身につけよう、気に入られようとした。
けれど、どうしたって生まれながらに厳しく貴族教育施された兄達には劣る。そんな中途半端な庶子は、何したって生粋の公爵家の坊っちゃんの癪にしか障らないものよ?
何貴族の真似事してんだよ、テメーってやつよね。そもそもが自分達の父親の愛情一人占めしてた庶子なんだもの。手加減無しよ。
結果馬鹿にされ、家族として受け入れられるはずもなく……。
そもそもこの国は男社会、身分社会なのよ。当主の父親が近くでちゃんとフォローしないなら、余計無理ってものだわ。
大体、当主の俺が愛した女との子供だから、俺の家で育てるのは当然だろうなんて態度では、聖人君主でも受け入れるの難しくない?
まず一つ目のターニングポイントはダーリン(仮)と出会うより、ずっと前のある夜。私は未来を夢に見た。
当初の夢では、縁もゆかりも無い美少年が現れて突然、現在のように成人したダーリン(仮)と全く同じ姿へと成長する。
そしてダーリン(仮)は現在の時間軸となる今日、この場所で瀕死の重症を負った。
更に、そこにいるダーリン(仮)のパーティーである三人と全く同じ姿をした人達三は、無惨な遺体と成り果てたの。
見るからに損傷の激しい、痛ましい三つの遺体。
何故なら夢の中の彼ら三人は、死の直前、そして死後も故意に肉体を痛めつけられたから。
三人を殺したのは、数十人の刺客達。刺客達は自分達の殺害の痕跡を消し、魔竜に殺されたように見せかける為、三人を甚振ったわ。
生き残ったダーリン(仮)だって、とっても深い傷を体だけじゃなく、そう、クールでビューティーなご尊顔にも負わされたんだから!
最低な刺客達の蛮行によって仲間を殺され、死に瀕したダーリン(仮)へ、不意にある者が囁くの。
――卑怯者達に陥れられ、仲間を失い悔しくないのか。復讐の為に我を受け入れろ。我と共に人・類・を滅ぼせ。
そう囁いたのは刺客達に襲われる直前、必死にパーティー一丸となって討伐したはずの魔竜だった。
絶望と憎しみに駆られたダーリン(仮)は……頷いてしまう。
そうして魔竜の言う通りにダーリン(仮)は不味そうな魔竜の血肉を食み、一時的に仮死状態になったわ。
私ならもっと良いお肉食べさせたのに! 案外、食あたりで仮死状態になったんじゃない?!
まあそれを見た刺客達は依頼主に、ダーリン(仮)のパーティー全滅を報告したでしょうね。
野晒し状態だったダーリン(仮)の体は、いつの間にか大地の亀裂に転移して黒い繭に包まれた。この中で魔竜と一体化していく。
三年後。彼は魔竜王として孵化したわ。姿形はそのままに、漆黒の髪と瞳となって。
孵化した瞬間の彼のすっぽんぽんたるや! まさに至高の芸術作品! 思い出すとまた鼻血が……。へへへへへへへへ……コホン。
魔竜王となったダーリン(仮)は、自身の生家である公爵家を、そしていつの間にか世代交代していた、新王が収める祖国を滅ぼした。
で、今度は世界を滅ぼさんとするのだけれど……はい、そこで疑問に思っていただけたかしら?
この場合、滅ぼすのは刺客達とその依頼主だけじゃなかったのかって。
いくら魔竜と一体化したからって、何故じ・ん・る・い、だなんて大仰な範囲に? 不思議に思わない?
だって仲間を殺されたからって、復讐相手に人類を選ぶ?
幼い私は、夢の中で首を捻った。
すると美少年時代のダーリン(仮)が、どんな生活を送りながら成長していったのかも、夢は再現してくれた。
結論から言えば魔竜討伐の日。満身創痍ながらも何とか魔竜を討伐し終えたダーリン(仮)が率いるパーティーが、気を緩ませた直後に襲撃するよう刺客達に命じたのが、ダーリン(仮)の名ばかりの家族。そしてまだ王太子だった新王よ。
実はダーリン(仮)、とある公爵が妾に産ませた子供だったの。
ダーリン(仮)の母親は平民だったけれど、公爵家当主だった父親は母親に癒されて相思相愛だったんですって。
しかもその母親は彼が六歳で急死。父親は当然のように愛する女性との子供を引き取ってし・ま・っ・た・。
これには私、同情しちゃう。
もちろんダーリン(仮)にもだけれど、何より継母となってしまった公爵夫人と、二人いた異母兄達によ。
父親は一国の公爵家当主だし、親として引き取るのは、まあわからなくはない。
けれど普通に考えてみて? ダーリン(仮)は不義の子供よ?
ただでさえ公爵夫妻の夫婦仲は冷えきっていた。そのせいか頼りのはずの父親は、何かと邸を留守がち。
ダーリン(仮)の実母が生きている時は、そっちに寝泊まりして帰らなかったみたい。けれどダーリン(仮)を引き取ってからは、わざと仕事に精を出し、結局邸に帰らないわけ。
そんなクソ旦那が他所でこさえた子供と、プライドの高い夫人や兄達の邸で過ごす時間が多くなればどうなるか。
はい、児童虐待の開始。
別に夫人や異母兄達が悪いかって言えば、私はそうは思わない。
冷たい? まあ否定はしない。だって今の私は悪の大魔女だもの。
でもね。自分達の家庭ぶっ壊した女の息子が、貴族の中でもトップクラスの公爵家に籍を入れる。面白いなんて酔狂な心情になれるかしら? って、聞くまでもないわね。
そりゃ積年の恨みとばかりに飯抜き、殴る蹴るの暴力だってふるっちゃうわ。常識としてはどうかと思うけど、人としてはまともな反応じゃない?
もちろん虐待はね、ダメ、絶対。ダーリン(仮)は……悪くは・ないわ。
そして夫人達が不義の子供を愛する気になれないのもまた、責められないでしょ?
夫人からすれば夫の行動は、女としてもハイクラス夫人としても、プライドや面子をズタズタに傷つけるものだもの。
もちろんダーリン(仮)は頑張って貴族らしい品を身につけよう、気に入られようとした。
けれど、どうしたって生まれながらに厳しく貴族教育施された兄達には劣る。そんな中途半端な庶子は、何したって生粋の公爵家の坊っちゃんの癪にしか障らないものよ?
何貴族の真似事してんだよ、テメーってやつよね。そもそもが自分達の父親の愛情一人占めしてた庶子なんだもの。手加減無しよ。
結果馬鹿にされ、家族として受け入れられるはずもなく……。
そもそもこの国は男社会、身分社会なのよ。当主の父親が近くでちゃんとフォローしないなら、余計無理ってものだわ。
大体、当主の俺が愛した女との子供だから、俺の家で育てるのは当然だろうなんて態度では、聖人君主でも受け入れるの難しくない?