また君に会うための春が来て
昼になると、皆立ち上がって、文化部室棟の屋上へ向かった。屋上へ行くと、文化部室棟の生徒達の他にも、野球のユニフォームを着た野球部をはじめとする運動部の生徒達がいた。屋上にいる生徒達は、あやに気がつくと「あっ!」という感覚のリアクションをするものの、入学式の時のような、好奇の目でジロジロと見る事は無くなっていた。いまは男女を問わず、元芸能人で子役タレントだったあやを「可愛い」「綺麗だ」などと、心の中で気に入っている者ばかりだった。
文化部室棟屋上の30名くらいの人だかりに混じって、バレー部2年の前田よしとがいた。よしとは、りおを見つけると、歩み寄って来て、話しかけた。
「お!神楽!神楽も聴きにきたんだ?」
と言った、よしとは、あやとさやにも挨拶をすると、
「俺、なんかすごい場違いな感じ!あっちで聴きます!」
とそう言って、別の人だかりにヒョコヒョコと移って行った。
さやは「面白い人だね♡」と言った。
りおは、仕方が無いから、よしとについて簡単に説明しておいた。男子バレー部で1年生の9月からレギュラーだったこと。ポジションはセッターで司令塔だということ。りおとは1年生の頃から同じクラスで、よく話した、男子の友達だと言うことを伝えた。
あやは、もしかすると、りおはよしとが好きなのではないかと疑念を抱いたのだった。あまりにも流暢に、よしとについて説明するものだから。
りおは、昨年も体育祭で大活躍だった事に加え、今年の体育祭でもきっと大活躍だと、思う事を伝えた。
赤い髪の軽音楽部部長がマイクで挨拶をした。
「こんにちは。ギターのKENです。今日この日のために屋上に集まってくれて...」
そう言いかけると、後ろからニット帽を被った男子生徒がスタスタと歩いてきて、ギターのKENからマイクを奪った。
「みんなありがとう!」
ニット帽の彼がボーカルだ。そして「ギュイーンッ」とギター音が響くと、楽曲「気持ち悪くならなきゃテンション上がらないでしょ」を演奏し始めた。
「大丈夫♪大丈夫♪虹を信じている♪僕たち♪」
どこかで聴いたような感覚の若干ある楽曲だった。
そしてライブの最後にニット帽のボーカルからマイクパフォーマンスで
「浦川辺さん!文化祭も聴きに来てくれたら!きっと『嫌いじゃない』って!」
と、あやは言われたのだった。