また君に会うための春が来て
あやは、携帯電話を右手に握りしめていた。
よしとは、教室にいるりおを呼んだ。
「神楽~!後輩!」
それを聞いてりおが廊下に出る。
よしとは、そのまま廊下を歩いて行った。
「あやちゃん。どうしたの?」
「りお先輩」
雨の音が、廊下の窓をつたって、聴こえてくる。
雨粒が、たまに窓に弾ける。
あやが話し始めた。
「連絡先とか、SNSのグループとか、4月に交換したのがあるじゃないですか。それ個人的なメッセージを沢山送っても大丈夫ですか?」
と、妙に畏まって、あやが言う。
りおの丸眼鏡の両目に、あやが一人ずつ、キラリと映る。
「いいよ!」
りおは嬉しそうに、そう答えたのだった。
「そんなことで!すみません!じゃあ、また部活でお願いします」
あやはスタスタと自分の教室へ帰って行った。あやが文芸部員になってから2カ月と少し。