また君に会うための春が来て


2022年8月30日午前。長空駅改札内に集合する二人。行き交う人々の服装も夏そのものだ。男性も女性も、自分のセクシャリティを主張することが多い季節ではないか。



あやは、



「今日も可愛い服で来てくれましたね!」



と言う。



りおは、思い切ってワンピースを着ていた。薄い赤が穏やかな色彩の、華美ではない、かといって地味でもない主張のあるワンピースだった。あやは、花柄の姫系ファッションだった。ピンクと白の色彩に身を包んだ、夏らしい恰好だ。



りおは、照れくさそうに、



「花柄が綺麗だね」



と、あやのファッションを見て言った。自分のために着て来てくれたのかと、りおもあやのために着て来たから、自然とそう思うのだ。



あやは、



「行こう!」



と言って、りおの手を引っ張った。



駅のプラットフォームが、熱気を帯びて、真夏に違いない暑さの中を、女の子が二人、小さな旅路を行く。飲料水の自動販売機が、暑さの中で立ち尽くすサラリーマンを連想させるほどに暑い。そんな暑さをものともせず、二人は日常から離れた世界観を楽しんでいた。



たこ焼きミュージアムへは、電車で30分かかる。



乗り換えは1回。



トウキョウ♪リンカイ♪コウソク♪テツドウ♪リンカイ♪ラ~イン♪



車内のアナウンスに笑みがこぼれる。まるで二人しかいないかのような、混雑車両。普段乗らない電車と向かう先。冒険心のドキドキを胸に、二人の心が、強く合成されていく。



「りおは本当は男の子が好きなのではないか」という悩みを、些細な事だったと感じられるほど、二人きりの時間を行く表情が、さながら特急列車のように、振り切っていく。



降車駅も、人で混雑していた。家族連れ、カップル、大学生と思しき集団などいる。駅のエスカレータを抜け、改札口を通って、駅に接続された大きな商業施設の中へ入っていく。さらに歩いて10分の所にたこ焼きミュージアムはあった。

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