また君に会うための春が来て




体育館では、もうすぐ部活対抗ブレイキンが始まる。



「それでは部活対抗ブレイキンを始めたいと思います」



司会の声がマイクで響く。



暗転して、静まり返ったあと、大きな音と共にBGMが流れた。



ドゥン!ドゥン!ドゥン!



野球部がユニフォーム姿で、完璧に踊りはじめた。いつブレイクダンスなんて練習しているのだろう。皆、坊主頭で、あんなに愛想笑いをして。BGMは注意深く聴いていると「アキバ系地雷姫でんせ2」という楽曲だった。



よしとが立ち見をしていると、よしとを見つけたバレー部1年の松岡、岡部、井沢と新垣がやって来た。



「前田先輩。野球部の踊り、嫌いじゃないんですね」



松岡はあの件以来、よく懐いている。



ブレイキンのBGMが、鳴り響く体育館に大勢の人が集まっている。



園崎とみずきは、二人で仲良さそうにしているが、1年生4人は、その場を離れない。



しばらくして岡部が話し始めた。



「この間の練習試合で、俺のスパイクで相手のリベロが吹っ飛んだんです」



よしとは、岡部の方を見た。



岡部は「感謝してます。俺ら」と言う。



よしとが「あぁ!」と言うと、1年生4人は嬉しそうだった。



「勝とうな!」



と、よしとは明るく言った。選手権の予選が9月下旬から始まる。東京都予選は勝ち上がらないといけない。







部活対抗ブレイキンが終わると、軽音楽部部長が出てきた。



「今日この日のために長空北高校体育館に集まってくれた皆。ギターのKENです」



髪色が、ゴールデンウイークのライブの時のように、また赤髪になっている。



「髪、これポリシーでやってるんで」



とマイク越しに話すギターのKEN。



後ろからスタスタとニット帽のボーカルが歩いてきて、マイクを奪った。



「『嫌いじゃない』って言う感じが凄く責任感あると思います。もちろうんそう思って貰う側にとってです」







ブブパ♪ブブパ♪ブブブ♪パブブ♪パブブ♪パ♪







すると「イエーッ!」と体育館中から歓声が上がった。こんなに大勢がこの場に来ていたのかという大歓声が轟く。



「おぉ!」



「おぉ!」



「おぉ!」



「おぉ!」



という重低音のようなコールで体育館の窓ガラスがビリビリと揺れる。



ブーッ♪ペッ♪ペペペ♪ブーッ♪ペッ♪ペペペ♪ブーッ♪ペッ♪ペペペ♪



パブブ♪パブブ♪パ♪



ズンッ!



「大丈夫♪(ハイッ!)」



「大丈夫♪(ハイッ!)」



「虹を信♪(ハイッ!)」



「じている♪(ハイッ!)」



「僕たち♪(ハイッ!)」



ゴールデンウイークに文化部室棟の屋上で聴いた時より格段に良くなっていた。



今回の楽曲は「気持ち悪くならなきゃテンションあがらないでしょ- Eurobeat mix- 」ということだった。
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