また君に会うための春が来て
しばらくして、りおとみずきが帰ってきた。
みずきが、
「コレに会って、捕まった!」
と小指を立てて、よしとに見せつけた。
「園崎か。そういうや俺、誰とも会ってないな。神楽。あと誰かいた?」
「いなかったよ」
「大変だったね」
「いいよ!」
残る花火を4人で見届けた。
その後、長空市花火大会は無事閉会した。明日になれば皆日常に帰る。非日常をくれた花火の夜。河川敷の大規模グラウンドを後にする来場者たち。
さやは、「駅まで送る」と言い、あやを駅まで送った。
あやは「帰りの道に気を付けて」と言って、今度はあやから、さやの頬にキスをした。
キョトンとするさやに、あやは「許してくれたお礼」と言う。
「彼女がみてたら怒るよ」
さやは、すっかり元気になって、
「友達記念日♡」
と言って、また両手でハートマークを作った。
それから、来る日も来る日も、あやは、りおと同じ時間を積極的に作った。昼休みだけでなく、文芸部の部室にいるときも。さやも、あやの理解者として、りおに時間を譲った。部活も、夜遅くまで二人で残って、真っ暗になるまで、お互いを語った。
恋人が、友達に負けてはいけない。あやは、出来上がった友情より、これから育てる愛情を選んだ。本当に愛おしいと思える人を、選んだのだった。りおに対する愛情の幼体は着々と育っていた。女性同性愛者として、はじめて出来た大切な恋人を離さないように。ただ容姿の優れた自分が全力で愛せば、愛すほどりおは心を開いてくれると思った。そこは相変わらずだったし、それが慢心だとは思わなかった。幸せは必ず分かち合えると思っていた。