また君に会うための春が来て
呼吸が、二人を少し、引き離して、りおは、
「大丈夫」
と言った。そして唇の輪郭を見つめ合った。
あやは、顔を赤くして、また唇を重ねた。
月が、私達を許してくれる。
「そして貴方はまた優しい目になるの」
風も優しく吹き抜ける。
「あやとのこと、知っている人増えたから、大丈夫」
あやは、月日を重ね、ここで心と心を重ね合うりおを美しいとさえ思うのだ、容姿の優れた自分から「美しい」と言ってはいけないのだろうと思いながら。
月をみて不意に涙するのは
今も昔も変わりません
故郷に喩えるひともいます
あなたは何に見えますか
いつかその人に会えますか
文芸部に入って半年と少し、あやが、やっと書けた月の詞。
心と心を、証明するために肉体があると言って、月が私達を許してくれる。
互いに憩う感覚の貼りついた二人が恋人だとして、凹凸が時に音を生んだとき、愛情の原形が次に生すべきことを教えてくれるものだとしたら、困難とはなんだろうか。