また君に会うための春が来て

第二話 浦川辺あや

2022年4月11日。

新1年生の浦川辺あやは、すっかり学校の話題の中心になっていた。教室でも廊下でも、「可愛い」「あれ昔テレビに出てた『浦川辺あや』だよな」と話題になった。



神楽りおは、あやとの出会いが心に引っかかっていた。あやが彼女をまっすぐ見つめてきた瞬間、心の中で何かが動いた気がした。



横山みずきと田原えみかも、あの一瞬の出来事が気になるようだった。



えみかは、

「先輩にさ~、ああいうこと言いに来る後輩は、同性愛の志向があるに違いないよね~」

と言う。



みずきは、

「あれは冗談抜きで始まると思う。この地味な委員長風『神楽りお』と元芸能人子役『浦川辺あや』の『禁断の交わり』なんだと思う」

と言う。



りおは、

「確かにスゴイ可愛い子が突然迫ってきたようなドキドキ感はあったな」

と言った。



あやと同じクラスの1年生達は、あやと親しくなろうと試みていた。あやは明るく陽気な性格で人当たりはよかった。元芸能人だが気位を感じさせない存在だった。



ただどうしても苦手な質問があり「芸能界はどんな世界なのか?」とか、そういった趣旨のことを聴かれると、



「あははは!もう戻らない世界だから!詳しいこと全部忘れちゃったな!」



と、見かけは明るく言うのだった。あやは芸能界にはもう戻りたくなかったし、詮索もされたくなかった。察したクラスメイト達も、芸能界の詮索は可哀そうかなという空気だった。



誰かが「部活は何部に入るの?」と話題を変えた。



「つくりたい!」



あやは即答すると、クラス中が「おぉっ!」と溜息をついたのだった。この日は午前から午後まで、一日通して新入生オリエンテーションが行われ、新1年生は皆入りたい部活を選ぶために真剣に参加した。進学校と言えど、部活動は青春だ。そして、放課後になると、なんとなく出来たそれぞれの友達と共に教室を後にした。

< 6 / 51 >

この作品をシェア

pagetop