また君に会うための春が来て
放課後の男子トイレは、ささやかな男子会のための貴重な空間だ。
「浦川辺あや、超可愛いよな。絶対告白したい」
放課後の男子トイレは、そんな話題で持ち切りだった。
1年生の教室は校舎の1階。
2年生の教室は校舎の2階。
放課後の教室棟は、生徒がほとんどいない空間になった。
あやは、同じくらい身長の高い女子生徒と、自然と親しくなった。
「中学の頃もこうだったな!同じくらい背高い子と何かとペアだった!ボッチにならんよう頼む!あたしもボッチは嫌だからな!」
あやは明るく言った。相方は、雛菊さやという子だった。
「人懐っこいよね、あやちゃん♡あやちゃんって呼んでいい?よろしくね♡」
さやは、心なしか目をうるうるさせて言った。
「ありがとう!さやちゃん!」
あやとさやは、教室から廊下に出た。そして1階の階段下から2階に続く階段の踊り場を、不意にジッと見た。そして数秒間、誰かを待っているのか、絵画を描くような真剣なまなざしで、時計の音が聴こえるような数秒間、階段の踊り場をじっと見たのだった。
さやが、
「どうしたの?」
と聞いた。
すると、あやは、「ハァ~」と息を吐いてから、
「あの場所で泣いて『神様を頼った』記憶が何故かあるんだが・・・?」
と言う。
「・・・え?」
一瞬、あやとさやの空気がシンとした。