また君に会うための春が来て
あやは、
「よく分からないけど、私が大泣きしたせいで『時間が巻き戻った』体験だけ記憶が何故か微かにあるんだよ。まるでここで何回か高校生活を送ったことがあるみたいに。でも具体的には何も覚えていない、誰と話していたかとか」
と言う。
そして、さやは言った。
「え~!なにそれ!気のせいだよ!気のせいだよ、帰ろ♡」
さやは、
「ねぇ?仲良くなれたし、マックかミスド行かない?楽しいな♡あやちゃん♡冗談もハイセンスだね♡」
と続けた。
さやは心の中で思った。
「あやちゃん、きっと特定の人と親しくなるの大変なんだろうな、あんな冗談まで言ってくれて、嬉しいな。どうしようかな言っちゃおうかな?言っちゃおうかな?」
そして、さやは言った。
「『あや』と『さや』って名前近いね~♡運命だね♡」
これに、あやは息を吹き返したように笑った。
放課後、りおは所属する文芸部の新歓で正門前でビラ配りをしていた。
「おねがいしまーす。おねがいしまーす」
前田よしともバレー部の新歓のビラ配りに駆り出されていた。
「バレー部は陰キャばっかりだよ」
よしとは、歯切れが悪く、笑いを誘っているつもりかと思う態度だ。
りおは、よしとに、
「なんで『陰キャばっかり』って言うの?陰キャしか入部しなくていいの?」
と聞いた。
よしとは、
「背の高い陰キャは全員回収しないといけないんだ」
と言う。
「うん?バレー部の方針なら部外者が口を挟んではいけないけど」
「わかってくれ。とにかく背の高い陰キャは全員回収なんだ」
りおは、これ以上詮索するのをやめた。
正門に、あやと、さやがやってきた。二人は、これから一緒にマックに行く。新歓のビラ配りのビラを沢山受け取って、嬉しそうにお喋りをしていた。
「わぁ~♡あやちゃん、栽培部があるんだね♡生物部があるのに栽培部が別であるんだって♡北高生物部は微生物以外育てたくないんだって~」
「入りたい部活入っていいよ、さやちゃん」
「えーっ、あやちゃんと同じがいい♡」