やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 そうだわ……メイヴィス様とお話しするチャンスはないかしら? 何も知らないにしても、ラウル殿下から何か聞いてるかもしれない。

 それに、マティアスの首元の悪魔の紋様。何がどうなったら、悪魔と契約することになるの?

 私の頭では、ぜんぜん追いつかない。

 そこまで来て、はたと思い至った。

 ラウル殿下の死の秘密と、マティアスの悪魔の紋様の原因が、同じものだとしたら……?

 そうよ、どうして、今まで思いつかなかったの?
 
 ラウル殿下も、悪魔と契約していたら。

 私はぞっとして自分の体を抱きしめた。

 もしかして、ラウル殿下の仕事関係で?

 けれど、それならば、ジャンポールはどうなのだろう? 

 ラウル殿下とマティアスが契約しているのなら、何故二人と関係の近しいジャンポールは契約していなかったのだろう?

 ううん。私を助けに川に飛び込んだ時点では、だ。あの時、ジャンポールには悪魔の紋様はなかった。

「じゃあ、今は?」

 しんとした部屋に、私の独り言が響いた。

◇◆◇

「ニーナ。おはよう」

「シメオン兄さん。おはよう」

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