やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様

19 何を

マティアスは私の言葉を聞き、深く考え込むように、じっと私を見つめた。

　何を考えているの……？　不安になる。どうしても、良いようには考えられなくて……。

「君はハサウェイ伯爵夫人になる人だ。あわれな信奉者の一人が、君のために死ぬことになったとしても、それはもう気にするべきではない」

　絶望を隠しきれない昏い目をして、マティアスは言った。彼がそんな風に思っていたなんて……。

「……いい加減にして！」

　私は握っていた手を放して、力いっぱいマティアスを抱きしめた。

「私は……マティアスが好きなの」

　顔を近づけて、じっと見つめて、彼に可愛いキスをした。触れるだけの簡単な。

　マティアスは、ひどく驚いた顔をして唇を震わせた。

「……だって、君は……ずっと僕の誘いにも乗らなかった」

「色々……あるの。私の事情は、また詳しく説明するから。今は貴方の事情を聞きたい」

　ぎゅっとマティアスを逃がさないように強く抱きしめた。やっとつかんだ真相の尻尾を、絶対に逃がしたりしたくなかった。

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