やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 マティアスは頑なな私の様子に、観念したようにため息をつきながらやっと頷いて、唇にもう一度キスをしてくれた。

「あの日、僕たち、ラウル殿下と僕は仕事の合間でくつろいでいた。お茶を飲みながら何か、適当に話していたような気もする。ジャンポールが仕事で呼ばれ、その場は僕ら二人になった」

「ラウル殿下と、マティアスの二人になったのね」

「……ああ。その時だった。ラウル殿下の飼い犬、リシャールが言葉を喋り出したんだ。どう考えても異常で、何かに操られているのか、目も虚ろでしわがれた人間の声を出していた。縛られたみたいに僕たち二人は動けず、気が付いた時には呪いをかけられたことを知った……僕たちの最愛の者を失う呪いだ」

「だから……悪魔と契約したのね? その呪いは、どうしても解けなかったの?」

「僕たちも懸命に努力したが、古代の呪いで、解ける方法が……伝えられていない。ラウル殿下は王に頼み込んで王家の特権を使って禁書も見てもらったがなかったそうだ。だから、契約した。僕たちの命を代わりに、君、ニーナとメイヴィス嬢の呪いを解いてもらうことになった」

「……だから。なのね。そう」

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