やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様
 メイヴィス様の恋の真相も、これでわかった。だから、ラウル王子は自分の死後、嘆き悲しむだろう婚約者メイヴィス様を助けるために記憶を消そうとしたんだ。

「悪魔が言うには、命の代償は命。それは、簡単なようだが、辛いよ」

 自嘲するように笑うとマティアスは、力なくソファの背もたれに寄り掛かった。

「これからの君を守るのは僕でありたかった。……だが、ジャンポールならば申し分ない。君を任せることが……」

「もうやめて」

 マティアスの言葉を遮って、私はぴしゃりと言った。なんで、なんで、ここで彼はそんなことが言えるんだろう。

 私を守って死ぬ覚悟をした人を、どうして見捨てることが出来るの?

「私は……マティアスの傍に居る」

「聞いただろう。僕は一年しか生きられない……君を守ることだって、出来ない」

 項垂れたマティアスを、もう一度強く抱きしめると、私も覚悟を決めた。

「ずっと、傍に居る。すぐに死んでしまうとしても、貴方と一緒に居たい。マティアスと一緒に居たい」

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