やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様

20 嘘

早朝に帰宅した私を、目に見えて憔悴した父と兄2人が出迎えた。

 おそらく、私の居場所は馬車の御者から知っていたと思うけれど、家格の違いから、押し掛ける訳にもいかないし、悶々とさせてしまっていたのだと思う。

「ニーナ。お前……自分が何をしたか、わかっているのか」

 ヴァレール兄さんの苛烈な怒りの視線に目を合わせて私は頷いた。

「私……マティアス・グランデ様と結婚します」

 自分と同じ色の紫色の目を、見つめ返した。

 普通ならば絶対に許されないことをしたのは申し訳ないけど、私はこの先マティアスと生きていくから、この人に負けてしまう訳にはいかない。

 ヴァレール兄さんはそんな私を見て視線を外すと、はっと大きくため息をついた。

「これが巷に知れれば、ハサウェイ家との婚約は立ち消えになり……お前が嫁げるのはあのグランデ家の三男だけになるだろう。良かったな? ニーナ、お前の望むようになる。方々にご不興を買いながらな。満足か?」

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