やり直し失恋令嬢の色鮮やかな恋模様

21 願う

「マティアス、ちゃんと見て。背中のリボン、変になっていない?」

 私は謁見室の前のドアでドレスの背中にあるリボンを気にして振り向いた。

 今日着ている薄紫色のドレスは確かに可愛いけれど、背中にいくつかリボンがあって、曲がったり潰れて変になったりしていないか、どうしても気になってしまった。

「いや? 変なところなんて、何も。それに、ラウル殿下に僕たちが背中を見せることは、ほとんどないと思うから、大丈夫だよ」

 心配し過ぎだと軽くふふっと笑いながら、マティアスは私の背中を押した。

 今日は私が特別にお願いをして、ラウル殿下との謁見を望んだのだ。

 もしかしたら……ラウル殿下は、メイヴィス様の記憶を消してしまった後かもしれないけれど、何もせずに動かないより、動いていたかった。

 そうこうしている内に、謁見のための部屋の大きな扉が開いて、私たちは中へと入った。大きな窓から入る白い光が眩しくて、思わず目を細めた。

 逆光の中には薄茶色の髪を持つ美形の王子。ラウル殿下。

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